2008年 C−times No.26

第16回

 全税共地域文化賞

 贈呈式 於:2008年4月21日 ホテルパシフィック東京
   賞金 100万円(全国税理士共栄会文化財団)


  第16回全税共地域文化賞<CATA>の贈呈式が、4月21日ホテルパシフィック東京(品川区)にて開催されました。
  本年度は伝統芸能分野から「黒沢田楽保存会」が受賞されました。



黒沢田楽保存会(愛知県新城市)



 黒沢は奥三河の東北部、静岡県境に接した山間の全戸数が7戸という集落で、林業と田畑で生計を立てています。この地に伝承されている黒沢田楽は、北設楽郡設楽町田峰の田楽、新城市鳳来寺の田楽と並んで三河の三田楽と称されています。
  つるぎ舞など呪師系統の呪術芸、翁・三番叟などの猿楽系統の舞、さらに穀物の耕作のさまを問答や所作で模擬していく田遊び系統の芸能など36演目を次々に演じる黒沢田楽は、他の田楽祭にくらべ芸能種目の多彩豊富さ、耕作模擬が稲作より畑作に傾いていること、呪師芸に古色が見られることが特色です。
  とりわけ評価されるのは、この多種多彩な芸能祭事をわずか7戸の家の男子が鍵取荻野家を中心に、今に維持継承してきた伝承に対する情熱と結束力の強さです。
  人里離れた狭隘の山中の産物にも恵まれない土地で、伝統の祭祀と芸能を心の支えに懸命に生きてきた村人の心意気は様々な障害をも乗越え、近郷の村民や学校生徒達と共同で新たな田楽伝承の体制づくりを模索する機運をつくりました。
  いま、少子高齢化・市町村合併などが地域文化の基礎を大きく揺り動かし、伝承の持続とその行方が日本全体で問われるとき、7戸9名の伝承者が必死に伝統継承に取組む黒沢田楽の過去と現在は大いに賞賛にあたいするものです。




第17期 助成

 −芸術活動分野−

1.倉知可英(愛知県名古屋市)

 1998年フランスにある国立振付センターに留学後、8年間ダンスカンパニーで得た経験を元に新しいコンテンポラリーダンスの追及を試みてきました。
  フランス国内の小中学校の授業にダンスを導入するなど、地域社会と連携した活動も展開してきました。
  帰国後は、地元の異分野のアーティストと共同で公演を行うなど、地域の芸術活動の担い手を育成しながら地域文化の活性化につながる活動をしています。

 

古コ景子(神奈川県藤沢市)

 南米アルゼンチンをはじめ世界各国で演奏し、研鑽を続けているマリンバ奏者です。
  アルゼンチンの打楽器奏者を迎え、日本・南米の文化を融合させたオリジナル曲を本邦初公演で発信するなど、異文化交流により生み出された新しい音から、人種や言語、時代を越えた世界観を表現します。
  静岡県など南米出身者が多い都市で公演を行うことで、日本との相互理解を深める活動をしています。

 

3.ダンスカンパニーDeux(東京都調布市)

 芸術の向上・発展・普及を目的とした活動や、若手舞踊家の育成を目的とする活動を続け、今年20周年の節目を迎えた現代舞踊のカンパニーです。
  現代を鋭く見つめたテーマを、ダンサーの肉体と豊富なアンサンブルとで語る創作活動に専念し、芸術性の高い作品に触れてもらう機会を広く地域の方々に提供しています。
  地元では無料公演を開催し、幅広い年齢層から参加者を募る企画を実施するなど、地域社会に根ざした活動をしている団体です。

 

4.子どもの文化研究所(東京都豊島区)

 紙芝居は近代庶民階層が生み出し、子ども達の中で育まれた日本独自の文化財です。
  昭和初めに誕生した街頭紙芝居は全て手書きでした。印刷紙芝居もあわせて戦時中に大部分が失われ、現在はほとんど遺されていません。
  現存する作品は歴史的にも貴重なため、次世代への遺産として一作ずつ修理・点検し保存保管作業に取組んだり、脚本・絵・語りという三要素が求められる演じ手の養成講座を開くほか、創作塾・紙芝居劇場といった多方面にわたり活動を続けています。

 

5.コカリナこども合奏隊(秋田県能代市)

 コカリナは秋田杉の間伐材を利用して作られ、ソプラノ・アルト・バリトンの三種類があります。一つひとつ手作業による加工のため手間がかかり高価な楽器ですが、間伐材を利用することで環境への配慮もしています。
  また地元の産物から作られたコカリナを教材として取り扱い、全校児童が地域の行事に積極的に参加し演奏するなどの活動を行うほか、コカリナを奏でることで地元に対する誇りや愛情を持つなど、ふるさと教育にも繋がる活動をしています。

 

6.(財)せたがや文化財団世田谷美術館(東京都世田谷区)

 昨年開館20周年を迎えた世田谷美術館は、地域に密着した事業、特に教育普及の分野に最も早く取組んできました。文化的土壌ともいうべき豊かな人脈と風土がある土地ですが、住民の地域の変化に対する意識が低いという問題も抱えています。
  街づくりは、まず住民がその街の魅力を認識するというところから「写生術」という企画を立上げ、写真という文化を用いた住民とのコミュニケーションの中から街に対する再認識をうながし、未来の街づくりを担う人材を育てるという企画も行っています。

 

7.Dance Asia(神奈川県横浜市)

 日本のコンテンポラリーダンスに対する認識はヨーロッパ志向が強く、自らの地域文化との関係、アイデンティティに意識的な振付家は多くありません。
  自らの、地域文化の身体性を基盤に作品を作っているアジアの振付家を招聘することで、日本の振付家・観客とともに、ヨーロッパ人とは違うアジア人の身体性の在り方を再考させる機会を提供しています。

 

8.わらべうた音楽教育研究会(神奈川県川崎市)

 忘れ去られようとしている伝統音楽であるわらべうたを使い、遊びを通して情操教育や音楽教育を行う目的で、地域の子ども達を対象にわらべうた教室を開催しています。
  また地域の幼児教育や学校教育など子育てに関わる方々や、保育などを学ぶ学生などを対象に音楽教育としてのわらべうたを実際に体験しながら学んでもらうなど、活動の柱である指導者養成事業として研修会を実施しています。

 

 

9.美濃子どもミュージカル(岐阜県美濃市)

 小中高校生を対象に結成され、地域に根ざした創造団体として厳しい稽古に徹しています。毎年オリジナル作品で公演する努力を怠らず、専門家の指導を受けながら研鑽を重ねています。
  国際交流、地域間交流と海外公演、姉妹都市公演など広域的に活動の場を広げ、地域文化の向上に貢献しています。
  卒業生の中には音楽活動を進路として選択したり、後進の指導に誇りをもってかかわるなど、人間形成にも大きな役割を果たす活動をしています。

 

10.劇団WANDERING PARTY(京都府京都市)

 映像インスタレーションを舞台美術に仕込み、言葉で紡がれる物語と役者の身体表現によって、従来味わえなかった新たな刺激と創造法を提出するなど、他の劇団の追随を許さない舞台を展開しています。
  また社会的事件や宗教問題、医療問題などを取り上げた作品を数多く舞台化し、演劇だけでなく現代美術作品としても成立する作品を提出することで、美術の世界でも注目を集める試みをしています。

 

11.初期型(東京都東久留米市)

 ユーモアのセンス、エンターテイメントな舞台構成は定評があり、主催者の個性を色濃く出しながら観客の意識を引き続ける骨太な作品に仕上げています。
  振付家やダンサーのテクニックや語法を活かした表現をすることも、ダンシングや身体を使った表現をすることもない現在のコンテンポラリーダンスの中にあって、身体の全てで表現する娯楽性と芸術性を持った作品を追求し続けていることにより、常に生の魅力を観る側に伝え続けます。

 

 

 −伝統芸能分野
1.美作大学地域生活科学研究所美作地域史研究会(岡山県津山市)

 津山市内の歴史・文化とりわけ地域の有形無形の文化財を取り上げ研究しています。特に今まで殆ど研究がされていなかった美作地域に伝わる「作州神楽」の文献調査、実施調査を行い、保存のためのデジタルアーカイブ化に取組み、地域の伝統芸能研究に貢献しています。
 また得られた成果は、公開研究会や生涯教育講座を開催するなど、地域住民と共有し伝統芸能の保存等に協力してもらうための活動もしています。

 

 

2.「古代からの響き、未来への祈り」実行委員会(島根県出雲市)

 出雲市大社町に中世から継承されている伝統行事に欠かせない「しゃぎり太鼓」は、地域住民にとり一番身近でかけがいのない伝統芸能ですが、近年の少子高齢化の問題で指導者や演奏者が減少するなど、後継者不足による保存継承が危ぶまれています。
  次代を担う子供達を対象に、プロの和太鼓奏者に指導を仰ぎワークショップを開催するなど、伝統文化保存継承の新たな試みとして他に例を見ない継承活動に努めています。

 

3.兵庫県立三原高等学校郷土部(兵庫県南あわじ市)

 昭和27年創部以来55年目を迎え、半世紀以上にわたり師匠の熱心な指導と地域の支援のもと、500年の歴史を持つ淡路人形浄瑠璃の伝承に積極的に取組んできました。
  浄瑠璃・三味線・人形遣いの三業をすべて生徒が演じており、その質の高さは高校生とは思えず国内外において高い評価を得ています。
  また、年間島内外合わせて20回前後の公演を行い、海外公演も数回行うなど国際交流にも貢献しています。

 

4.NPO法人東かがわ市ニューツーリズム協会(香川県東かがわ市)

 江戸時代から続く白鳥神社に奉納する芝居「だんじり子供歌舞伎」は、役者が5〜10歳、振付師や三味線など多くの人々が約40日間携わる、費用も多大で大掛かりな行事でした。
  5地区によって奉納されていましたが、戦後は数が減り昭和32年を最後に休演となりました。その後、地元保存会の努力により平成5年に復活し現在に至っています。
  指導者などの人材不足が課題となっているため、継承していく上で手引きとして活用できる基礎的な資料の作成を進めています。

 

 

 −伝統工芸技術分野−

1.足立茂久商店 足立一久・照久(新潟県長岡市)

 新潟県は伝統的工芸品の業種・品目がたくさんありますが、製造者が少なく産地を形成していないため“こだわりのものづくり”をしている方々が多くいます。
  足立氏は売るための製品は開発しないという信念のもと、技術向上のための研修会や商品開発にも力を入れ、家業の曲げ物造りでは新しい分野の製品作りに挑戦しています。
  息子にものづくりと哲学を伝え、日本の伝統技術を残していきたいという信念から、家族三人で曲げ物の技術と産地寺泊山田を守っています。


2.宮本雅夫(兵庫県三木市)

 建築に用いる手道具である鉋は、電動工具の普及とともに現在の現場から姿を消しつつあります。
  日本の伝統建築を支えてきた鉋職人の技を継承し、特に「炭火鍛錬工法」に徹した製作法は斯界でも高く評価されています。
  大工道具の生産地として有数な播州三木においても、後継者育成は重要な課題であるため、若手後継者の育成のためにも力を注ぎ、65年以上培った鉋鍛冶の技と心を後世に伝えていくために、日々鉋づくりに精進しています。

 

 

 −人材養成事業分野−

1.社団法人全国公立文化施設協会(東京都新宿区)

 全国各地の公立文化施設は、市民に優れた舞台芸術の鑑賞機会を提供すると共に、市民の芸術文化活動への支援など、文化性豊かな地域社会づくりをめざした活動を行っています。
  各施設に専門的知識を有する職員を配置するため、舞台芸術などの専門的事項を研究・学習し、地域文化振興に重要な役割を担う人材の養成を目的とした研修会などを行っています。